ハロウィーンに関係の深い“ケルト”について、ケルト占いの第一人者、アイラ・アリス先生に、妖精や占いを交えてその魅力と不思議な世界を解説してもらいました。
 
ケルトってなに?
ケルト人とは、紀元前数世紀の昔から、ヨーロッパの非常に広い地域に分布していた民族。多数の部族にわかれていてひとつの国家を形成することはありませんでしたが、共通の文化を持ち、それを総称して“ケルト”、その文化を持って暮らしていた人々を、“ケルト人”と呼びます。その後、ケルトの人々は、ローマ帝国の進撃に遭い、壊滅状態となってゆきました。しかしそんな中にあって、ローマから遠く離れた島であったアイルランドは、ケルトの文化を色濃く残す貴重な土地として、研究者たちの注目を集めているのです。
アイラ・アリス
プロフィール:ホロスコープ研究のため、ルネ・ヴァン・ダール・ワタナベに師事。「天文心理学」「ホロスコープ・カウンセリング」「アルケミイ体操」を習得。ケルト文化(神話や要請物語、ドルイドのマジックなど)の研究も行っている。 http://www.rene-v.com/
ドルイド
ケルトの人々は大自然を崇拝し、万物に精霊が宿ると考えていました。私たち日本人の、“八百万の神々”に対する信仰と似ていますね。中でも樹木に対する信仰は厚く、大きくてたくましいオークを、木々の王として崇めていました。
信仰にまつわるさまざまな儀式が行われていたようですが、それらを取り仕切っていたのが、祭司階級であった“ドルイド”です。彼らは神々の言葉を伝える代弁者であったため、祭司としてばかりでなく、法律や裁判、政治にも強い発言力を持ち、ときには部族の長をしのぐほどであったと伝えられています。ドルイドは強い魔力を持つと信じられ、大いに恐れ敬われていたのです。
ファンタジー物語やゲームなどでおなじみの、“真っ白な髭をたくわえ、杖を振って様々な奇跡を起こす魔法使い”のイメージは、実はこの“ドルイド”に源泉があります。
Liam's Pictures from Old Books
妖精たちのふるさと
ケルトは、“魔法使い”のふるさとというだけではありません。実は、“妖精”たちのふるさとでもあります。“妖精”というと日本では、羽根の生えた、小さくて可愛らしい姿を想像する方が多いかもしれませんね。でもケルトには、もっと素朴で、いたずらで、ときに恐ろしい、さまざまな姿の妖精たちがいました。イメージとしては、日本にいる“妖怪”に近いものがあるかもしれません。
後になって彼らが、さまざまな文学作品や芸術、映画などに取り上げられ、姿形も大きく変化させながら、多種多様の妖精となって、現代の私たちを楽しませてくれているというわけです。もともとケルトに生まれた妖精たちは、あるものは大自然の力の象徴であり、あるものは、信仰されなくなって姿の小さくなってしまった古き神々であり、またあるものは、亡くなった人の魂でした。彼らはいつも人間のそばに存在し、ときにかかわりを持ちながら、共存してきたのです。
アイルランドに住む人々は、目に見えぬ存在の彼らに敬意を払い、不興を買わないよう、そして自分たちの日々の生活を守ってくれるよう、祈りながら暮らしてきました。その素朴で謙虚な生き方の中には、現代の私たちが忘れてしまった、大自然と調和しながら生きていくための知恵があるように思います。
 
ハロウィーンには占いを!
ハロウィーンは、ケルトの暦で言うところの“大晦日”。春に咲いた花が実を結び、秋の収穫を終え、大自然が長い休息の季節を迎える……その始まりとなる日です。この日は、精霊や亡くなった人の魂が息づく“異界”と、私たちの住む世界との境界があいまいになり、“あちら側”から“こちら側”へ、さまざまなものたちが流れ込んでくると考えられています(もちろん逆もあるのですが!)。中には人間に悪さをするものも多いため、それを追い払うために恐ろしげな格好をしたのが、ハロウィーンの仮装の起源と言われているのです。
さて、ところでこんな日は、私たちのインスピレーションが高まったり、普段にない予言の力や、未来のヴィジョンを見通す力が強まるとも言われています。また日本でも、“一年の計は元旦にあり”と言って、お正月におみくじを引いたりしますね。これから新しい1年が始まる、という節目の日に、その年を占うご神託を得たいという思いは、どこの文化にも共通しているものがあるようです。ですから、ハロウィーンの日に占いやおまじないをするのは、実はとても意味のあることなのです。
ダニエル・マクリースの「スナップ・アップル・ナイト(Snap-Apple Night)」にも描かれているように、伝統的には、“アップル・ボビング”という占いが有名です。アップル・ボビングというのは、たらいなどに水を張り、中にリンゴを浮かべて、手を使わずに口でそのリンゴを取る一種のゲームなのですが、より大きなリンゴをとった人が幸運とか、より早く取れた人が幸運、などとして楽しんだようです。また、ケーキの中に金貨などを隠しておいて、切り分けたときにそれが当たった人は幸運……などという占いもしていたようですね。
あなたも、ハロウィーンの夜には異界の魔力を借りて、そっと未来をのぞいてみてはいかが……?
 
Attwel by Marbel Luice
 
And, Sweetly Singing round about Thy Bed by Warwick Globe
 
The FairlyQueen Takes an Airy Drive by Richard Doyle
 
 
 
スナップ・アップル・ナイト(Snap-Apple Night)
りんごの力
ハロウィーンに行う占いで、もうひとつ有名なものがあります。それは、リンゴの皮を最後まで切れないようにむき、それを肩越しに後ろへ投げて、落ちたその皮の形の中に、未来の結婚相手のイニシャルを読み解く……というものです。ハロウィーンの占いには、リンゴを使うものが多いようですね。これは、この時期がちょうどリンゴの収穫時期だから……ということももちろんあると思いますが、実はそれ以上に、深い訳があります。
それは……“リンゴ”が、魔法と大いに関係があるということなのです! ケルトでは、リンゴは妖精とのかかわりが深いと考えられていて、妖精や亡くなった人の魂が棲む“ティール・ナ・ノーグ(永遠の若さの国)”では、一年中花が咲き乱れ、リンゴをはじめとする果物がたわわに実り、人々は年をとることがなく、いつまでも幸せに暮らす……と言われています。
また、ケルトに限らず、いにしえよりリンゴは愛や知恵の象徴とされてきました。ギリシャ神話には、「最も美しい女神に捧げる」とされたばかりに、ヘラ、アテナ、アフロディテの三女神が争い、ついにはトロイ戦争にまで発展してしまった“黄金のリンゴ”のエピソードがありますし、イヴが蛇にそそのかされて口にした禁断の果実も、“リンゴ”であったという説があります。
……つまりリンゴは、若さや美しさ、愛、知恵、そして命そのもの……の力を宿すものとして、古くから信じられてきたのです。ですから、特に恋を占いたいときや、おまじないをかけるとき、リンゴは必須アイテム。
ハロウィーンにはおいしいリンゴを食べて、その不思議な力にあやかりたいものですね!
 
「The Halloween Encyclopedia」 by Risa Morton
Adam and Eve by Albrecht Dürer (1507)