アイルランド島は北海道とほぼ同じ面積で比較的小さいのにかかわらず、その地形は変化に富み、多様な美しさに溢れています。12000年前までは氷河に覆われていた為、その後の氷蝕と堆積によって形成された景観が今もなお至るところにわたって確認出来ます。氷河の移動により島の西部では地表の土壌が取り除かれて岩盤の露出する不毛な地帯が形成され、東部には氷河によって運ばれ堆積した粘土や砂による肥沃な土壌が形成されています。
グレーの花コウ岩の大地や山脈は、特に島の西部と北西部に見られます。大西洋からの厳しい波風の影響を受けた断崖絶壁が印象的なアラン諸島やモハ?の断崖、月面にいるかのような錯覚をおぼえる一面岩が剥き出しの台地バレンなどが代表的な自然景観です。また他には島内唯一のフィヨルドと大小無数の湖の点在するコネマラ地方、神秘的な山容のテーブル・マウンテンやヨーロッパ一の標高差を誇る大絶壁スリーブ・リーグなど手付かずの自然が残るアイルランドの秘境、スライゴーやドネゴールがあります。
一方、暖流の恩恵を最も受け南方系の植物も育ち、明るい雰囲気が漂うキラーニーやコーク近郊の南西部には、海岸沿いに赤色砂岩によって形成された山脈や台地が連なりますが、山々は比較的低く最高峰のキャラントゥールヒルでさえ1040メートルしかありません。複雑な海岸線の入り江と黄金色に輝く砂浜、それに鮮やかな緑の丘が交互に織り成す自然美は、島内でも屈指の景観です。
山脈は島の東側ではダウンとウイックローの一部にも見られ、これらは玄武岩から形成されています。ダブリン近郊ミーズやコーク近郊のティぺラリー一帯は、うねった小丘陵が続く緑豊かな牧歌的な田園風景が広がります。北部のアルスター地方のストラングフォード湖やメイヨーのクルー湾にはドラムリンと呼ばれる卵を臥せたような帯状の小丘陵が連なり、くじらの背が水面に競り上がったかのようなユニークな景観が見られます。
アイルランドの自然景観は、気紛れな空の変化とあいまって様々な表情を見せます。光と雲が織りなす色彩は複雑で、一時として同じ光景を留めないほどです。
その他に特徴的なのはヨーロッパでも有数の規模で、実に国土の5分の1を占める地域に見られる「ピート・ボグ」と呼ばれる泥炭地です。「ピート・ボグ」は苔や植物が湿った地中で腐敗し、数千年にわたって蓄積し圧縮された結果できた泥状の地層です。これらの泥炭層は切り取られ乾燥された後「ターフ」と呼ばれ、現在でも各家庭の暖房用燃料として広く使用されています。
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